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人の命(2013年) | IMCニュース

人の命(2013年)

 ここ何十年世の中は『人の命』をテーマにある種の宗教的ヒステリーが支配している。人間の生命と人の命が別々の道を歩いている、命に勝るものはない?命は何事にも優先する。命を奪うものは悪? 日本の戦後の平和主義と同じようなフレームがここでも繰り返されている。一方で人間の命は病気、事故、戦争、虐殺、犯罪、飢餓社会の多くの場面で失われている。人の命を奪うものが単純な悪と護憲思想と同等な価値観で論じられている。毎日テレビ、新聞では殺人事件が報じられ人の命が奪われている。でもその人たちの命はテレビドラマの命とは違うのでしょうか?私には末期がんで一生懸命頑張った人の死も、テロの犠牲になって死んだ人の死も、飢餓で死んでいった人の死も、戦争で戦って死んだ人の死も etc, 命がなくなることには変わりないと思うのですが。このように考える命が『人間の命』で、テレビドラマや多くの人の口から節操なく出てくるのが『人の命』と分ければいいのかな。いつも世間のいう『命は大切』というフレーズを違和感を持って聞いています。かつてある国の首相が『人の命は地球より重い』といった言葉を何の躊躇もなく受け入れてしまった日本人はそこで思考停止になったのでしょうか? やはり言霊の国、日本の面目躍如。護憲、戦争反対、平和主義、など日本人の主張するスローガンは言霊に支配され硬直化し理論の余地もありません。同様なことが『人の命』にもあるようです。人間は身勝手な生物です。ただ『考える葦』であるためにすべての事柄に意味づけてしまいます。ただ身勝手なので都合よく意味づけてしまうものです。生き物の命は同じで大切だと言いながら生き物を食して生きているのは? 極端な言い方と反論もあるでしょうが、どう『命』の意味と軽重を測ったらいいのでしょうか? 実際命の軽重なんかある訳がないと思います。生命(命)は生まれ死すのみです。自然界ではそれが道理です。しかし人間社会では当然ですけど其々の命に
物語があります。一番単純な物語の主人公は自分です。自分にとって一番大切な命は自分の命です(違うという人もいるかもしれないけど、単純化しましょう)。次に大事な命は連れ合い、子供、親、兄弟など自分の係累でしょう。それから友人、同僚、知り合いと拡がって行きます。大きくなると同じ国の人、人種、同じ宗教etc.となるのでしょうか。主観的に人の命の軽重が存在します。それ故に他のコミニュティー、集団と対立し戦い命のやり取りができるのでしょう。今の日本人は人の命を最も粗末にするのが戦争だと思っているのではないかと思います。現在の世の中の『人の命』の取り上げ方を見ていますとそう思えてなりません。戦争で亡くなる人々は命を粗末にしているのでしょうか? 戦争は理由なく起こっている訳ではないでしょう。命を懸ける意味があるから戦っているのでしょう。戦争と言う極端な例で述べましが、何でもかんでも『人の命』が大切と皆が一線に並んで言うのは違和感があります。命は大切です、自分の命も他人の命もすべての命は大切です。でも人間の命は有限なものです。『命より大切な物はない』と絶対的に思うことに違和感があります。やはり物事には相対的な価値観があることも認めるべきです。戦後?の日本人はどうもこの相対的価値観への寛容さがなくなっています。最近の体罰問題も同じような要素を感じます。どの命が大切かそれぞれの人が自分勝手に考えることも許容しましょう。ただその中でどんな命をも無意味に否定することはやめましょう。それで良いのではないかと思います。
 ぐだぐだと述べてきましたが、医者になって多くの人の命の現場を見てきました。正直人の命を客観的に見てしまう習慣が付いてしまいました。自分の親の死も同様に感じてしまいます。勿論感情はありますから其々の死に対して主観的に感じる部分もありますが。この世に生まれてくることの奇跡(誰の子として、いつ生まれるなど)はあっても死は平等です。奇跡的な死はありません。生まれてくることは科学であり、神秘であるからです。『命が大切』という観念は生まれてくることが神秘である延長線上で考えているからだと思います。一方死は奇蹟でも神秘でもありません。命を無駄(主観的な)にすることが命を大切にしないこととイコールではないと思います。無駄と考えるのが相対的な価値観を認めていない可能性があるからです。自分で書いていてもう一歩踏み込めないテーマにしてしまいました。ただ戦後の日本の風潮が勧善懲悪、異論を許さず、となっているようなのでその一つとして大それたことに手を付けてしまいました。自分ももっと精進しなければと感じています。