医療情報 | IMCニュース
医療情報
昨今、新聞、雑誌、TV、新たにインターネットなどで多くのマスメディアから医療情報が簡単に得られるようになりました。またインフォームドコンセントの認識の拡がりにより医療機関での情報量も以前に比べれば格段に増えています。ある意味では情報の氾濫とも言える状態です。その中で医療従事者も含め市民の皆様が情報を獲得し、参照されるにあたり、以前にも増した情報処理能力が必要となってきております。情報が多いことは悪いことではありませんが、その分情報処理、判断は難しくなります。そこで多少なりとも皆様の情報処理、判断の助けになるようにと私の考えを述べさせてもらいます。 実は先日、厚生省の発表した医療情報で少々医療現場を混乱させたことがありました。ある痛風に使う薬の副作用情報でしたが、通常厚生省は医療機関、関係機関に緊急情報として発表、通達されるのですが今回はマスコミへの発表が先行してしまって医療機関への通達は翌日になりました。私はたまたま前日のTVニュースで見ましたので翌日患者さまへの説明もできましたが、TV,新聞など見損なったらどうなるでしょうか?患者さまから副作用情報を教えてもらうことになります。非常に問題ですよね。医師が薬の副作用情報を知らなかったと言うことになります。ここで今回の問題点を申し上げます。薬の副作用情報は薬の能書に記載されておりますが、新しい副作用、重大な(死亡例が出るような)副作用は製薬会社が全国から集計し、厚生省に報告します。それを厚生省が各医療機関に通達します(勿論製薬会社も独自に医療機関に情報として流します)。今回のような情報は中央に集計され発表されるものです。現場の医療機関ではこれらの情報が伝達されない限り知りえる情報ではありません。従って知らない医療機関があってもあたりまえのことです。もう一つはなぜマスコミの発表が早くなってしまったのかと言う疑問です。マスコミの情報開示への奢った義務感、厚生省の単純なミス、または厚生省の意図的なリークなどが考えられます。このように医療情報は他の機関、組織のバイアスの掛かることもあります。勿論医療機関側のバイアスがかかることもあり、判断の難しさが付きまとう問題です。医療情報は国民にとって切実に必要な情報です。バイアスの掛からない、真に必要な情報が望ましいのですがどうしてもこの情報時代には一級の情報から2級、3級の情報が氾濫してしまいます。それを医療の専門家でない皆様に鑑別しろと言っても無理なことです。また時にマスコミの人たちは色々な医学会で発表される論文などを見て面白そうな(その人が)、画期的な発表をそのまま情報として新聞、TVで載せてしまいます。学会発表はまずそれぞれの研究者が自分たちの主張を展開する場であり教科書に書けるようなコンセンサスを得た知見が発表されている訳ではありません。私事で申し訳ありませんが以前『ライム病』という病気について先輩と本邦初の症例を発表したことがありました。その頃その研究の一環として1000名近くの血清を集めライム病の抗体検査をして学会に発表しました。それをマスコミの方が見つけ取材にきました。私も日本でこの病気の存在をアピールし、啓蒙し注意を喚起したい気持ちで取材に応じ病気についてTV,新聞に取り上げてもらいました。ただ結果として自分の思っていたこと以上にセンセーショナルに発表されてしまいました。実害はあまりなかったと思いますが、一時一部の地域で必要以上に心配されてしまったようで今考えますと、自分の研究テーマが取り上げられるうれしさと、病気についての啓蒙したいと言う気持ちが先立って申し訳なかったと思う気持ちが多少残っています。このような例もあるように、皆様の生命に関る医療情報はなかなか判断できにくい部分があります。上手に情報を処理するためには新聞やTV等に載ったから真実だと決め付けないこと、専門家(医師など)に解説してもらう事です。我々医師は普段から自分達の責任とよりよい知識を得るために努力しています。すべてにお答えできないかもしれませんが皆様より多少知識が多い分疑問や質問にお答えできると思います。そのためのかかりつけ医でもありたいと思います。ぜひご遠慮なく何でも聞いていただきたいと筆を執りました。